フテブテの歩み

文筆/脚本/シナリオ/演劇///ハンドメイド/タロット​ ◆表現ユニット燃ゆる塵芥主宰 HP→https://yukifutebute.wixsite.com/yuki-fute-bute

五木寛之 『人間の関係』


f:id:yuki-fute-bute:20200512010327j:image
 
最近、五木寛之さんの『大河の一滴』という20年以上前の著作がコロナ禍に悩む人々に寄り添う本として再注目されているそう。それを受けて「世界一受けたい授業」で五木さんのインタビューが放送された。インタビューはその著作の内容に沿って、今、伝えたいことを話すというものだった。
 
話している姿を見たのは初めてだし、会ったこともないのだから実際のところはわからないけれども、なんだか人を包みこむ力を持つ海のような人だと感じた。しっかり歳を重ねられ、広い目を持っている方なのだろうと思った。
 
そういったことがあって、1年ほど前に読んだ『人間の関係』という五木さんの著作を本棚から出してきて、再読した。
 
 
今、ウイルスによって人間社会にさまざまな問題が生まれ続けている。
生活支援・教育・政治、それらの問題に声を上げること自体はとても大切で必要なことだが、「声の上げ方(伝え方)」や「声を上げている意図」には違和感を感じることがある。
人間同士が国や家族、その他自らに関するコミュニティや自分自身の牌を確保することに躍起になっているのではないか、つまり人間関係が己の利ありきのものになっているのではないかと思う。
 
 
全ての人間が悩みや不安を抱えている。それは生存に関わるもの、健全な精神の維持に関わるもの、社会参加に必要なもの、さまざまだ。
全ての人間が譲り合わずに己の欲しい分だけを引きちぎっていったら、国も共同体もすぐに滅びてしまうだろう。
 
必要な主張をしつつも、より苦しい隣人には譲り、指導者には感謝と必要な協力をする、そういう人間関係を作るために、人を愛しながらも愛しすぎないことを学ばなければならないのではないか。
 
人間が安らげる優しさと必要な冷たさの両方が学べる本。決して甘く傷つかない言葉だけを書いた本ではないけれどもおすすめ。