浅草演芸ホールにゆく
今まで新宿末広亭の深夜落語や、木馬亭、落研の落語会などに行ったことはあったが、演芸ホールにはまだ一度も足を踏み入れていなかった。
浅草というと激しい江戸下町の血が沸き立つというか、ヤジも少しは飛ぶんかなと思っていたが、会社帰りのスーツのリーマン風男性なんかも多く、大半は落語ファンだったが、色物にも結構紳士的で、しっかりとした拍手を送っていた。
今でさえお笑いの王道である漫才も演芸ホールでは色物だ。
ビートたけしがフランス座にいた頃の師匠もコント一筋で、漫才をはじめるなら破門という言葉もあったようだ。
寄席は時代の変容から少し遠ざかったところにある。
浅草はノスタルジーなどこか懐かしいような香りが漂う街だ。その一方、新たな風も舞い込みつつある。
雷門から少し離れた場所にある小さな履物屋・文房具屋、競馬新聞片手に場外競馬場近くをたむろする中年男性、そんな古くからの住民たちとすれ違うのは観光客やそれを取り囲む人力車の若い車夫だけでない。電動自転車にスーパーのレジ袋と幼い子どもを乗せ、颯爽と走る身綺麗な女性、押上付近に続々建てられるタワマンの住民なのだろう。
浅草は旧住民・新住民・観光客の三つ巴で成り立つ街だ。
美化や改修を重ねながらも、古きが猥雑に混ざり合う。それらは不純物なのだろうか。